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第 32 回INS環境リサイクル研究会講演会

はじめに

コロナ禍でおそらく3年程度参加を控えていたINSリサイクル研究会講演会に参加しました。
最先端技術、最先端情報、今後の流れに触れておくべきだなと3年ぶりに感じた有意義な講演会でした。
講演資料は公開できませんが、個人的に参考になった事を以下にまとめてみます。

講演内容

(1) 【基調講演】脱炭素社会に向けた LCA の利活用
  国立研究開発法人産業技術総合研究所 安全科学研究部門 研究部門長 玄地 裕 氏
(2) 太平洋セメントグループにおけるカーボンニュートラル戦略 2050
  太平洋セメント㈱ 執行役員 中央研究所長 高野 博幸 氏
(3) 新しいごみ処理トンネルコンポスト方式 ~燃やせるごみの再資源化による脱炭素/SDGs の実現~
  ㈱エコマスター・ジャパン 代表取締役 鎌倉 秀行 氏
(4) ㈱環境保全サービスにおける太陽光パネルのリサイクル
  ㈱環境保全サービス 取締役 菊地 信一 氏
(5) 岩手県のグリーン社会の実現に向けて
  岩手県環境生活部環境生活企画室 グリーン社会推進課長 高橋 政喜 氏

(1) 【基調講演】脱炭素社会に向けた LCA の利活用

・エネルギーペイバックタイム(EPT):何年稼働すればエネルギー的に元が取れるかの指標。
 EPT(年)=(製造にかかる全エネルギー:LCA)/(年間に発電する電力量)
・太陽光パネルを発電のEPAは現状「2弱」。つまり2年以内にエネルギー的に元が取れる。太陽光パネル発電がCO2排出削減に大きく寄与することを数字で理解できました。

(2) 太平洋セメントグループにおけるカーボンニュートラル戦略 2050

・自社で発生するCO2をセメントや廃コンクリートに封じ込める研究をされているとのことで、国も注目しているそうです。
・廃コンクリートはCO2を吸収する能力が高いそうです。廃コンクリートにCO2を封じ込め路盤材に再利用=地中に戻すことができれば、廃コンクリートのリサイクルに加えCO2削減に寄与できるます。是非実用化していただきたいです。

(3) 新しいごみ処理トンネルコンポスト方式

・知人が、一般廃棄物処理を目的とした堆肥工場事業で失敗した事例を見ています。発生する硫化水素による金属部品の腐食、脱臭設備稼働用の大量の動力電力消費で採算が合わずとん挫しました。
・トンネルコンポストは好気性発酵で硫化水素やメタンガスを発生させず、発酵施設はエアレーションのみで攪拌金属設備は無し。発酵過程で発生する70度程度の熱で水分を飛ばすという、今までの堆肥施設のマイナスを全てクリアした施設のようでした。
・年間10,000tのゴミが施設に入り、発酵乾燥させた後に選別される固形物は年間5,000t。これを固形燃料化。発酵物は発酵槽へ戻す。6年間行っているがバランスを崩したことはない。塩分も一定以上濃縮されない。
・あまりに興味深い内容だったので、質疑応答の時間、下記の質問をさせていただきました。
Q1.民間での運営とのことですが、建設費、収支を教えてください。
A1.収入は24,800円/tの処理費を市からいただいています。年間の処理量は11,000t、よって、年間売上は2億7千2百万円。経費は勘弁して下さい。施設建設費:16億円(焼却処理施設の半分以下)。
Q2.バイオトンネル内、脱臭層の微生物に関する特許は取得されていますね。
A2.どちらも特別な微生物は使用していません。自然界に存在する微生物です。
Q3.作業従事者数は?
A3.4名です。(驚愕!)
・トンネルコンポスト方式のごみ処理施設は循環型社会形成推進交付金の対象となったそうです。基準に合致すれば1/2補助。(循環型社会形成推進交付金等申請ガイド
・施設建設費に助成金が入り、土地をそれなりに安く購入または賃貸できれば、採算を合わせられることが感覚的に理解できます。
・製造される固形燃料の利用先の確保という条件はありますが、焼却しないことによる脱炭素、経済性は魅力ある事業だと思いました。

(4) ㈱環境保全サービスにおける太陽光パネルのリサイクル

・以前から、角の無いガラス破砕につての設備ノウハウを持った会社であることは知っていましたが、その技術を太陽光パネルのリサイクル処理に応用展開したということで、興味ある内容でした。
・はじめて処理工程の動画を見ました。完成されたリサイクルフローでした。
太陽光パネルを100%リサイクル!! エンジニアリング会社のリサイクル事業紹介(YouTube動画)
・会場から処理価格の質問がありました。回答は「3,000円(税別)/枚」
・ふと、軽米町に建設された東洋一?のメガソーラー「軽米尊坊(そんぼう)ソーラー発電所」が頭に浮かびました。
・使用枚数をネットで検索すると「15万枚」ということでした。(軽米尊坊ソーラー発電所が完成 パネル15万枚並ぶ
・20年後?これを全量廃棄処理しようとすると、15万枚×3,000円(税別)=4.5億円(税別)。これに撤去工事費が加算されます。
・今は法律で、太陽光発電所を建設する場合は、前もって太陽光パネルの廃棄処理先を決め契約しておく必要があるそうです。
・発電事業終了時の産廃処理費も確保しておく必要があるのだと今更ながら認識しました。対応年数20年?20年先の準備も必要な事業だということですね。

(5) 岩手県のグリーン社会の実現に向けて

・国は2030年度に2013年度比温室効果ガス排出削減割合「46%削減」というかなり野心的な目標を掲げていました。
・岩手県は2021年3月に、「第2次岩手県地球温暖化対策実行計画策定」で、2030年度に2013年度比温室効果ガス排出削減割合「41%削減」を掲げていました。
・かなり高い目標値なので、普段から思っていた下記質問をさせていただきました。
Q1.削減目標値がかなり野心的です。将来、目標を達成するために、事業者に対して事業で使用している車両の一定割合を電気自動車に切り替えよとか燃費に良い車両に切り替えよという強制力を発動する可能性はあるでしょうか?
A1.強制力を発動するのはかなり難しいので個人的には無いのではと思います。購入に対する助成を出す等の動きは現在もあり、その方向かと思います。
Q2.岩手の場合は特に森林が多い県です。温室効果ガス排出量計算においても「森林吸収」を算定されています。現在カーボンニュートラルということで、バイオマス発電向けの木質バイオマス確保の為、それなりの量の炭素吸収源である木が伐採されています。伐採後木の苗を植えてもすぐには成長しません。木の伐採に制限をかける時がくるのではないでしょうか。
A2.個人的見解ですが、おっしゃる通り「バランス」は大切だと思います。「バランス」を検証する必要はいつかはあるかと思います。